監督のことば

 企画者の芳賀庸子さんから、今回のドキュメンタリー映画製作について相談を受けたのは2022年夏のことでした。鈴木基之さんが出版された『生きたくても生きられなかった いのちの写真集』が送られてきたのです。
 写真集の中にはこれまで鈴木さんが写真パネル展のために集めた遺骨収集の写真が掲載されています。中には目を背けたくなるような生々しいご遺骨の写真がたくさんありました。もしかしたら、「子どもには見せたくない」、「こんなもの気持ち悪いから見たくない」とおっしゃる方もいるかもしれません。しかし、このご遺骨のひとつひとつが戦地で家族を思いながら亡くなっていった兵士たちひとりひとりの「生きたくても生きられなかったいのち」なのです。
 それに気が付いたとき、私は、これは目を背けずに向かい合わなければならないテーマだと確信しました。彼らはもう声を発することは出来ませんが、この1枚1枚の写真から、私たちはその声を聞き取ることが出来るはずです。私は、写真パネル展に取り組む鈴木さんの姿を通し、皆さんに「生きたくても生きられなかったいのち」の声を届けたいと考えています。
 皆様のご支援、ご協力、何卒、よろしくお願いいたします。

都鳥 伸也(監督・プロデューサー)