▶︎製作意図

辺野古新基地建設、高江ヘリパッド、オスプレイ……。今、メディア上では毎日と言っていいほど、沖縄の問題が議論されています。
その中で必ずと言っていいほど出てくるのが、「反対運動は年輩者の問題で、若い世代には関係ないことなんでしょう?」「若い世代には基地を容認している人も多いのでしょう?」という意見です。
おそらく、「若い人たちだって、基地反対の想いを持った人たちはたくさんいる」と反論される方も多いと思います。しかし、本当のところ、沖縄の若者たちはどう考えているのでしょうか? 誰もが感じる疑問にもかかわらずこの点に迫ったドキュメンタリー映画や書籍はあまり例がありません。
そこで、私は、自分と同世代である20~40代の若者に視点を置き、彼らがどのように今の沖縄を生きているのかを見つめるドキュメンタリーを製作しようと決意し、2018年1月からカメラを回しています。
実際、取材を重ねていくうちに、若い世代にとっては基地が存在するのが当たり前であるがゆえに「基地反対」の声があげづらい現状があることが分かってきました。
戦後の沖縄においては、働く場所がないから基地内で働いてきたという人たちがたくさんおり、そのため、基地労働者を親に持つ人が少なくありません。また「基地内で働きたい」、「外国の人と話して英語力を身につけたい」という人たちもいると言います。
それは、漠然とした憧れのようなものもあり、米兵と恋愛するのがステータスであるという話も聞きました。そんな中で、多くの若者たちは人間関係を壊さないために沖縄が抱える問題から目を背けてしまうのです。
もちろん「気が付いてしまった以上、見てみぬふりは出来ない」と「反対」の声をあげる若者たちもいます。しかし、同世代の中では少数派となってしまい、苦悩する姿も見えてきました。こうした若い世代に視点を当てていくと、私たちがこれまで気が付いていなかった沖縄の混沌が見えてきます。 
『私たちが生まれた島 ~OKINAWA2018~』では、その姿を出来る限り取材し、そのありのままを描き出したいと考えています。私は、今、沖縄問題の未来を語るうえで、この混沌を直視することがとても重要なことだと感じています。きっと、その混沌の中にこそ、沖縄問題を解決するヒントが隠されていると信じているからです。

都鳥 伸也(監督)