私たちはこの映画を応援します

東北のヘソに位置する北上市には、たくさんの戦争遺跡や遺物、歴史が残されている。このたびの戦争に関するドキュメント映画の完成を大いに期待しており楽しみにしている。綿密な取材と、戦争を二度と繰り返さないという平和への強い願いを後世に伝えるべくよい財産ができるものと思う。平和記念展示館の軍事郵便や戦争当時の遺品などに触れることによって、ともに、若い世代への平和教育にきっと有効に役立っていくものと確信する。
 

髙橋 洋明(北上平和記念展示館・館長)

ここには15年戦争の縮図がある

北上・和賀地方には戦時中、国産アルミニウムをつくる工場や、特攻機を製造する疎開工場などがありました。そして、和賀町藤根の後藤野飛行場からは、敗戦 6日前に特攻機が飛び立ち、 3名の若者が帰らぬ人となっています。

終戦直前の空襲や、残された7千通の軍事郵便など、この地方には戦争に関する様々な事柄が集中しています。
15年戦争の縮図ともいえるこれらの出来事を、戦争を全く知らない若い監督やスタッフが、ドキュメンタリー映画という形で世に問うのがこの作品です。
大いに期待しています。
 

加藤 昭雄(『後藤野 −最北の特攻出撃基地−』著者)

戦争の記憶を記録に

 この映画のテーマは「(戦争の)記憶の継承」ですが、そのために大切なことは、記憶を映像や言葉にして「記録」することだと、出演された小原麗子さんが述べられています。同感です。

 私が監督した映画「陸軍前橋飛行場」では、戦争で翻弄される様子を日記に書き留めた人が出てきます。軍部の意向に流されない視点が明確なことに驚きました。
 北上では平和記念展示館が「記録」を基に皆で語りあう場になっていました。北上に倣って前橋でも資料館の準備が始まろうとしています。
 

飯塚 俊男(『陸軍前橋飛行場 私たちの村も戦場だった』監督)

 

私の故郷である和賀町に暮らす父(斎藤駿一郎・八十八歳)は昔、後藤野飛行場の空襲のおり、遠く爆撃の地響きを聞いた記憶を生々しく語っていた。本作には父の知人が何人も登場するが、彼らが語る故郷の未知の相貌には驚きを禁じえない。わが故郷は東北の要衝であり、それゆえに多くの戦争遺産があるのだと。戦争の記憶を通じて眺める故郷の風景はいっそう愛おしく、それは私の平和と護憲の信条に、リアルな血と肉を与えてくれた。
 

斎藤 環(精神科医・筑波大学教授)