▶︎企画意図
岩手県釜石市は、アジア・太平洋戦争末期、2度の艦砲射撃によって市街地ほぼ全域が焦土と化しました。
これまでに確定した犠牲者は782名(およそ1050名が亡くなったとする民間調査もある)。仙台空襲(犠牲者1399名)や青森空襲(犠牲者1018名)に並ぶ東北でも最大規模の戦災でした。
しかし、敗戦から75年を過ぎた今、その経験をした人たちも少なくなり、市民からは記憶の風化を危ぶむ声が出ているといいます。
そこで私たちは、戦禍を語れる人たちがまだご存命のうちにその言葉を映像に記録し、記録映画として、この釜石艦砲射撃についてを残したいと考えるようになりました。
記録映画の世界には「記録なければ事実なし」という言葉があります。
釜石の艦砲射撃のような“地方の戦争”の記憶が消えてしまえば、教科書で紹介される「東京大空襲」や「沖縄戦」、「広島・長崎」だけがアジア・太平洋戦争で受けた戦災という印象になってしまい、実際に日本が受けた戦争被害がどんなに大きなものだったかが分らなくなってしまいます。
そうなってしまえば、これからを生きる若い世代にとって戦争が遠いものになってしまい、その結果として、もう一度過去と同じ過ちを繰り返すことになってしまうかもしれません。
記憶の風化に抗い、歴史の忘却を防ぐためには、釜石市民はもちろん、岩手県民、ひいては日本国民全員が、あらためてこの記憶と向き合う必要があります。
その意味で、実際に釜石艦砲射撃を経験をした方々にカメラを向け、声をひろって構成される記録映画はとても重要な存在だと言えます。
2021年、今年はアジア・太平洋戦争の開戦から数えると80年目となる節目の年です。
戦争を知る世代は多くが80代後半から90代となり、ご本人たちから直接お話しを伺い、こうした記録映画を製作するチャンスはあとわずかしかありません。
私たちは、未来に過去の事実を残すために記録映画の製作に動き出したいと思います。
本作の製作に向けて、皆様のご支援、ご協力を何卒、よろしくお願いいたします。
都鳥 伸也(監督)